2.3. Linux と他のオペレーティング・システム

この章の目的は、さまざまなオペレーティング・システムの機能を完全にテストしたり比較することではありません。 目的は、Linux の各機能を他のシステムと比較してみることにあります。 マーケットでの存在感のあるシステムだけを取り上げています。

2.3.1. Linux と他の専用 Unix(HP-UX、Tru64、AIX、Solaris、Irix)

すべてのハードウェア製造企業は、エントリ・レベルのマシンには Linux も採用していますが、ミドルおよびハイ・レベルのマシンには独自の Unix システムを採用しています。 マーケティング部門の希望する状況より、現実はもっと厳しいこともあります。 技術的には、Linux のディストリビューションは製造企業の独自 Unix ソリューションと互角ですが、現時点では市販のアプリケーションが不足しています。 また、多くのユーザーのワークステーションは、その目的を達成するために、フリー・ソフトウェアでのドーピングが行われています。

論点を明確にするため、製造企業の Unix ソリューションをワークステーションとサーバーに分けて考えることにします。

ワークステーションの場合は、このようなソリューションを使用するのは、フリー・ソフトウェアの世界には存在していないソフトウェアまたはハードウェアを使用する必要があるか、マシン固有のパフォーマンスによることは疑いの余地がありません。 前者の場合は、時間の問題と考えられます。 それは、すべてのソフトウェア制作者(おそらくハードウェア製造企業は除かれるでしょうが)やハードウェア製造企業は、アプリケーションの移植や、マーケットの主要なすべての環境でハードウェアを使用できるようにしたいと考えるのは当然だからです。 Oracle、Informix、Sybase などに見られるように、Linux は主要な環境の 1 つになっています。 後者の場合は、Linux が優勢のプラットフォーム(IA-32)とその競合プラットフォーム間の性能の差は縮小され、IA-64 アーキテクチャを使用した場合は差はなくなってしまいます。 また、IA-64 アーキテクチャは大多数の企業で広く採用されるものと考えられます。 何よりも、Linux は、これらの企業のプロセッサ(Sparc、Mips、PowerPC、68xxx、Alpha、Crusoe、PA-Risc)上でネイティブで使用できます。 私は、Linux は、誰もが待ち望んでいたが実現されることはなかった、著名でユニークな標準 Unix を具現化するものではないかと考えています。 Linux に備えられているオープンでフリーな特徴により、必ずそのようになると確信しています。 また、ハードウェア製造企業の Unix ワークステーションは、結局は、ハイエンドの計算、仮想現実など、そのソリューションがフリーな環境では得ることのできないニッチな分野に限定されていくだろうと考えています。 Linux では他の Unix システムの持つ機能はすべて使用できますから、PC を利用した Linux ワークステーションには、さまざまなハードウェア・プラットフォームが使用でき、価格もはるかに低廉です。 強力な Unix カルチャーを持ち(かってのワークステーションの使用者)、Microsoft システムから Unix システムへの移行を選択するであろう、すべてのコンピュータ・エンジニアが、Linux を選択するのは当然であると言えるでしょう。

サーバーの場合は、ワークステーションのところで触れたポイントに加え、複雑な問題があります。 たとえば、RAM、ディスク、プロセッサ能力、各種の拡張機能などが、IA-32 アーキテクチャのマシンへの転換を困難にしています。 また、ハイ・アベイラビリティ・クラスタなどのソリューションは、Linux 環境にはまだ存在しません。 これらのサーバーへのソフトウェア・ソリューションの配備のために費やされた投資に関する問題もあります。 サーバーの耐用年数もワークステーションよりも長いのが普通です。 このように、サーバーの分野では転換は遅れるでしょう。 したがって、Linux ソリューションをエントリ/ミドル・レベルのソリューション、ハードウェア製造企業の Unix サーバーをミドル/ハイ・レベルのソリューションと考えるのが、現時点では正しいと言えるでしょう。 これらのマシンに代わって Linux を導入する場合は、主として管理の面で、アプリケーションの可用性の検討から始めなければならないでしょう。

重要なアプリケーションを使用する場合に必ずと言って良いほど選択される理由となる、ハードウェア製造企業のソリューションの利点は、ソリューションの同質性(同一の実体によって支配されるハードウェアとソフトウェア、ただし問題発生時にサード・パーティをたよることはできない)と、サポートと保守の保証にあります。

最後に、これらのシステムは完全な親戚関係にあるため、それほどの違いがあるわけではありません。 コンピュータ・チーム "pro-Unix" が、パーソナル・コンピュータで使用可能な他のオペレーティング・システムの場合と同じように、機能を損なうことなく最初から終わりまでのソリューションを揃えられるのは、各システム間の関係が近いことにあります。

2.3.2. Linux と SCO

Linux システムと SCO システムを比較した場合は大きな差があるように思います。 まず、前に述べたポイントは、この場合も当てはまります。 SCO はハードウェア製造企業ではないため、同質性のメリットはありません。 IA-32 Intel プラットフォームは両方のシステムでサポートされますから、ハードウェアのコストの面では同じです。 ところが、ソフトウェア・ソリューションのコストには大きな差があります。 基本インストールで提供されるソフトウェアは僅かで、拡張やユーザー数を増やすのに大きな費用がかかります。 1 つの OpenServer を管理しなければならない場合、その性能は Linux システムを凌駕していると言えます。 ただ、概念が古く、シンボリック・リンクが多くて管理が複雑です。 SCO のサポートするハードウェアは Linux の場合よりも少数です。 唯一のメリットは、インストールされたベースとアプリケーションのセットを使用できることだけです。 それも、いつまで続くかは分かりません。 また、SCO が IA-64 への移植に Monterey(AIX ベース)を選択した事実は、将来の OpenServer や UnixWare にとって大きな意味を持つものと思われます。

2.3.3. Linux と Windows NT

この比較は、Windows NT が SCO のようなオープン・システムではないため困難です。 オープン・システムではないために使用しない人もいるほどです。 Unix と Windows NT Server の比較には、John Kirch の行った優れたものがあります。 この問題についての卓越した見解を求めている人には、これを読むことをお勧めします。 Microsoft のオペレーティング・システムと Unix オペレーティング・システムの両方に通じている 1 人の専門家によって作成され、定期的に更新されています。 費用の面では、明らかにフリー・ソフトウェアにメリットがあります。 SCO の場合と同じように、サーバーを使用するのに一連の補助ソフトウェアが必要な場合は、さらに費用面での差は大きくなります。 この比較テストの著者によれば、何と 1 対 100 だそうです。 技術的には、機能、信頼性、管理、性能、サポートされるハードウェア、セキュリティなど、どの点をとっても、Unix システム、特にフリー・システムの方が Windows NT より優れています。 カーネルと独立していない GUI は NT が不安定である大きな原因です。 GUI でのエラーの発生を防ぐことは、カーネルでのエラーの発生を防ぐことよりも困難だからです(ユーザー・コンポーネントの前でユーザー・コンポーネントを制御することはできません)。

では、Windows NT の実際のメリットとは、次のどれでしょうか。 コンピュータとは Windows のことであると世間を説き伏せ、莫大なインストール数を誇る Microsoft の販売力、独自の環境でしか使用できないオフィス・アプリケーション(市場を独占)、さまざまな味付けの Windows(95/98、NT、2000)による混乱とサーバーおよびクライアント間の混乱、ハードウェア製造大企業のプラットフォームへの Microsoft システムの搭載を義務付ける契約、文書化された著名な標準規格を無視する独自コードに基づいて、マーケットを最初に支配する技術的イニシャチブ。

Microsoft にはサーバー分野でのヘゲモニーがありませんから、Unix と Windows は、将来も並行して存在していくと考えられます。 それはデスクトップでも同じです。